ベートーヴェン:ソナタ第14番作品27-2 「月光」

今日の1曲
10 /18 2012
9月のレクチャーコンサートでこの曲を取り上げた時にも
同じようなことをお話させていただきましたが、
来月のMusicTwigのコンサートでも同じ曲を演奏させていただきますので、
あらためて今日はベートーヴェンの「月光」についてお話ししたいと思います

この曲はベートーヴェンのソナタの中でも最もポピュラーな作品の一つですが、
「月光」という副題が実はベートーヴェンが付けたものではないことは
今では広く知られるところです。
この呼び名は、詩人のレルシュタープが第1楽章について
「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」とコメントしたことによります
確かにこの楽章はほの暗くて月光を思わせるところがありますが、
ベートーヴェンが実際にこのソナタに対して付けた副題は「幻想曲風ソナタ」です。
ではこの曲のどこが「幻想曲風」なのでしょうか

「幻想曲」=「ファンタジア」はルネサンス時代から近現代に至るまで
多くの作曲家が取り上げたジャンルです。
15世紀までにはヨーロッパの主な言語圏では「想像力」、「気まぐれな」という
一般的な意味で、ギリシャ語の「ファンタシア」の派生語が
広く使用されるようになっていました。
そして次第にこの言葉は、音楽に対しても使用されるようになります。
即興演奏のことを「ファンタジア演奏」と呼んだり、
自分の中に湧き出たあらゆる創造的ひらめきを駆使する自由な曲に対して
「幻想曲」という表題が与えられるようになりました

当時のソナタ形式は、
ソナタ形式で快活な第1楽章
ゆっくりな2楽章
速い3楽章、という急緩急の3楽章形式、
もしくは急、緩、メヌエット(あるいはスケルツォ)、急の4楽章形式が通例で、
一般的に1楽章に最も重きが置かれていました。

ですがこのソナタでは、
ソナタ形式で書かれていないゆっくりとした第1楽章、
2楽章がスケルツォ、
そして3楽章がソナタ形式で速いテンポになっています。
つまり楽章を追うごとにテンポが速くなり、終楽章に一番重きが置かれる構成となっています。
また、初めて意識的にペダルの使用を明記したり、
終楽章にカデンツァ風の終結部を置くなど様々なアイディアを聴くことができます。
つまり、自由な形式、自由な発想こそが
ベートーヴェンにとっての「幻想曲風」だったのでしょう

作家のロマン・ロランはこの作品について、
「二つの廃墟(1楽章と3楽章)の間に咲く一輪の花(第2楽章)」と言ったそうです

yukarigoto

ピアニスト後藤友香理のブログです。
音楽のこと、好きなもののこと、いろいろ書いていこうと思います!

オフィシャルサイト
http://www.yukarigoto.com/